【希望のりんごツアー】2016夏
7月23・24日、希望のりんごツアーが行われた。
被災地・陸前高田のいまを見て、会って、聞いて、話して、体験する。
そして、なにより楽しんで、新しいふるさとにするツアーである。
一関に集合し、気仙沼へ。
斉吉商店「ばっぱの台所」で昼食。
さんまやかつお、三陸のとれたての海の幸を、ばっぱたちが調理。
まるで気のおけないおうちでごはんをいただいているような満ち足りた気分になった。
金のさんまは斉吉商店の名物。
このサイトで買うこともできる。
http://www.saikichi-pro.jp/
3代目・斉藤和枝さんの話を聞く。
明るく、パワフルな女性だった。
震災に負けず、おいしいもの作りで立ち上がった経緯は、みんなの心を打った。
帰り際みんなで手を振ってくれた。
被災者でもある佐々木浩美さんの案内による語り部ツアー。
いつものように慰霊碑に寄り、手を合わせる。
一本松を見学。
ほたて漁師佐々木正悦さんを港に訪ねる。
新しい作業場が完成、新しい船が竣工。
震災から立ち上がるために集まった米崎町ホタテ組合の面々は、それぞれの道を歩みつつある。
だが、大きな借金は残る。
希望と不安は交錯している。
箱根山テラスでは、地元・高田高校の1・2年生たち、箱根山テラスのスタッフに向けて、パン講習会が開かれた。
講師は、ZOPFの伊原靖友シェフ。
アシスタントを務めたパンクラブのひのようこさんの話。
「女子高生たちはみんなピュアでシャイ。
『生地を触ってみよう!』と伊原店長にうながされ、恐る恐る生地に触る感じがういういしくて、かわいかったです。
そのうち慣れてきて、店長が話しかけることに返事が返ってくるようになりました。
伊原店長はすごいなと思ったのは、パン作りだけではなく、人生についてや進路相談まで。
まったく別の世界で成功している人が話してくれるのは、高校生たちにとってすごくよかったんじゃないかなと思いました。
最後はみんなで写真を撮ったり。
もじもじしていたのに、最後はみんな楽しそうでした」
この模様は地元紙・東海新報でも取り上げられた。
金野秀一さんのりんご畑へ。
みんな自分のオーナー樹の成長を確認。
青りんごがなっているのに歓声が上がった。
りんごの季節ではなかったが、金野さんのお宅で食べる桃がとてもおいしかった。
その後、語り部さんの案内で、大船渡へ。
津波を避けるために人々が上った丘へ上がり、実際に津波がどこまできたかを、震災以前の写真と照らし合わせながら、教えてもらう。
実際に津波を体験した人の語るリアル。
そのときの恐怖が目に浮かぶようで、心の中で手を合わせた。
大船渡温泉で海の見える露天風呂を楽しんだあと、大船渡屋台村。
津波で店を失った人たちが集まってできた商店街。
お寿司、焼き鳥、おでん、ラーメン、ワイン、生牡蠣。
いろんな店から思い思いに買ってきた料理を、テラス席でわいわいと食べるのはとても楽しかった。
木造の落ち着いた雰囲気が魅力の箱根山テラスで宿泊。
地元のペレットを使った再生エネルギーによるエコな宿。
翌日はイベント「ピッツェリア箱根山 with ZOPF」。
伊原シェフ監修のもと、箱根山テラスのスタッフ、そしてツアー参加者が協力しあい、ピザで地元の人たちをおもてなしする。
震災以降、焼きたて手づくりのピッツァを食べられる店はなくなっている。
そのこともあってか、85人もの人が詰めかけてくれた。
ZOPF特製のローストポーク、石巻の金華さばを使ったバーニャカウダ、コーンスープ。
仕込み、飾り付け、お客様の案内、お皿洗い。
みんなが力を合わせて、お客さんによろこんでもらうために、心をこめる。
生地がおいしそうにふくらみ、発酵の香りが漂いはじめる。
ホタテは殻付きのものを慣れない手つきで恐る恐る剥く。
野菜は地元のものを使って、きれいに盛りつける。
ピッツアの窯の番をするのも、薪割もみんなで行う。
ピッツァには豪快に、とれたてのホタテをのせて。
あるいは、シャルキュトリーボヌールのベーコンを。
焼きたてのフォカッチャも。
気持ちのいい室内、テラス席で海を見下ろしながらピッツァを食べる。
アップルガールズをはじめ、陸前高田で希望のりんごがお世話になっている方達もきてくれた。
お客様には本当に感謝。
終わったあとの心地よい疲労。
ツアーの人たち、箱根山テラスの人たちをてんてこまいさせてしまったけれど、被災地ににぎわいを起こしたというたしかな充実感があった。
箱根山テラスとうつくしいりんご畑を、新しい観光の目玉にしたい。
焼きたてのパンやピッツァが気軽に楽しめる陸前高田にしたい。
そんな希望のりんごのヴィジョンに半歩近づいた1日となった。