【希望のりんごツアー】2019春
2019年5月18日、19日に行われた「希望のりんごツアー2019春」。
一行は東北新幹線を一ノ関駅で下車、平泉の世界遺産「毛越寺庭園」を見学、「蔵元レストランせきのいち」で、酒蔵で作られるクラフトビールと郷土料理を堪能、陸前高田へ向かった。
陸前高田ドライビングスクールでは、田村満社長が震災の教訓を私たちに伝えてくれた。
震災のとき、田村さんはここを支援物資の集積と仕分の場所として開放。支援に入った自衛隊や警察、社屋を失った会社にも仮事務所としてのスペースを明け渡すなど、復興活動に尽力した。
そのときの同志が、地元の味噌・醤油メーカーである八木澤商店・河野通洋社長。
故郷・陸前高田に活気を取り戻そうと、2人を中心とした地元企業家による「なつかしい未来創造株式会社」が町づくりプランの作成や「未来商店街」の開業など、さまざまな活動・議論を重ねてきた。
ただでさえ震災によって多くの人が亡くなり、仕事を失って市外へ出ていく人が増え、さらに過疎が進めば、陸前高田は消滅してしまうのではないか? という強い危機感からだ。
陸前高田を、訪れたくなり、住みたくなる町にするため、田村さん、河野さんたちは、2020年秋、発酵パーク「カモシー」を開業する。
https://camocy.jp
八木澤商店による発酵レストランやセレクトショップ、りんごを発酵させて作るマイクロブリュワリーなど、発酵をテーマとした飲食店が集まる商業施設となる。
その目玉として、田村さんがオーナーを務めるベーカリー「マロ」がオープンする。陸前高田にりんごのパンが名物のパン屋さんを作り、たくさんの人を集めたいと思い描いてきた「希望のりんご」にとっては、まさに夢がかなうチャンス。全力で支援するしかないだろう。
ZOPFの伊原靖友シェフが、マロのアドバイザーを引き受けてくれた。震災の年から欠かさず私たちといっしょに陸前高田を訪れ、被災地への思いは人一倍。「行列が絶えない店」ZOPFのようなにぎわいを陸前高田へ持たらす力になってくれるだろう。
カモシーの立ち上げメンバーと顔合わせ。株式会社ソシオ エンジン・アソシエイツの町野弘明さん、服部直子さん。ロッツ株式会社の富山泰庸社長、走健塾代表の板倉具視さん。
河野社長に、高田地区から気仙川を隔てた今泉地区にある予定地をご案内いただいた。エネルギッシュな河野さんから夢のある話が次々と飛び出す。味噌・しょうゆ・日本酒の醸造が、古来盛んだった陸前高田の伝統を継承。未知で無尽蔵な発酵パワーを未来志向で生かし、グルメで健康マニアな現代人に刺さる「市場」を作り出す。
復興住宅建設のため山を切り崩した高台から、かっての中心市街地を見下ろす。津波が奪っていった街には瓦礫こそないが、いまだその当時と変わらぬほどがらんとしている。これから公園やスポーツ施設が建設され、復興の記憶を体験したり、スポーツの合宿で訪れる町として再建されていく。
中尊寺金色堂の金を産出したという場所にある「玉乃湯」を訪れたあと、人気の居酒屋「味彩」にて、りんご農家の金野修一さん、菊池清子さんらアップルガールズさんたちと夕食をともに。楽しいひととき。
広田湾を見下ろす絶景のホテル「箱根山テラス」にて宿泊。
翌朝、金野修一さんのりんご畑を訪ねる。ちょうどりんごの花の開花時期の終盤、金野さんの指導のもと摘花作業を行う。
摘花とは、大きなりんごを作るために、5つセットで咲くりんごの花をひとつだけ残し、あとは切除する作業。
参加者は、それぞれ自分がオーナーになっているりんごの木の摘花を行う。
いまやオーナー制度も5年目。木は枝葉を伸ばし、たくさんの花をつけているため、たった1本の木の摘花を終えるのも簡単ではない。りんご作りのたいへんさ、生産者の苦労がわかる。
金野さんのご好意で「お茶っこ」の時間に。アップルガールズも合流。ジュースの飲み比べや、お手製のがんづきをいただく。
「キャッセン大船渡」内の「THREE PEAKS WINERY」を訪問。
ワイン醸造の工房を及川武宏さんに案内していただく。陸前高田の古木になるりんごでシードルを、大船渡に植樹したぶどうでワインを醸造する。
ご両親とともに栽培するりんごから作るりんごジュースは、古木ならではのじーんと心に響くような味わいがある。
陸前高田の復興は道半ばだ。いまだ更地が多く残され、都会に比べれば人影も少ない。それでも、今回のツアーで出会った人たちは、町を盛り上げ、活気を生み出そうと、夢に向かって走りつづけていた。
同じ夢を見る私たちも、彼らを応援しつづけたい。